AnimaNext が物理カードを渡し続ける理由 CB Insights のインタビューから

2026年10月30日、CB Insights の経営者インタビューのシリーズに、私のインタビューが掲載されました。テーマは、私が東京で運営している NFC 名刺の会社 AnimaNext です。最初の質問は、創業者ならいつか必ず聞かれるものでした。「How do you define your market and where does your company fit into that space?」。自社の市場をどう定義し、その中で自社はどこに位置するのか、という質問です。

ページの冒頭に選ばれたのは、次の一文です。

"Most competitors assume the future is fully digital, but some people still value the physical card, and that's why we're giving the physical card as well."

日本語にすると、「競合の多くは、未来は完全にデジタルになると考えています。でも、物理的なカードを大事にする人はまだいます。だから私たちは、物理的なカードも渡しているのです」。インタビューの全文は CB Insights にあります。ここでは、この一文をデザインの側から説明します。製品のほかの判断は、ほとんどがここから出てきているからです。

「すべてデジタルになる」という考えの正しいところ

デジタルだけの名刺をつくっている会社は、情報については正しいと思います。紙に印刷した電話番号は、印刷所から届いた日から古くなり始めます。肩書きは変わり、部署は変わり、会社の名前さえ変わります。ウェブ上のプロフィールならいつでも書き換えられるので、リンクを開けば常に最新の内容が出てきます。

AnimaNext も同じ仕組みです。プロフィールはデジタルで、いつでも変更でき、相手はアプリを入れなくても見られます。相手のスマートフォンがカードを読み取り、ブラウザでプロフィールが開きます。

出会いの場面について見落としていること

完全デジタルの考え方が飛ばしてしまうのは、出会いの場面そのものです。同じ部屋に二人がいて、多くの場合は初対面で、どちらかが相手に何かを渡さなければならない。初めて会った人に、カメラを開いてもらう、アプリを探してもらう、使ったことのない機能をオンにしてもらう。挨拶の途中に、小さな作業が入り込みます。たいていの人はやってくれます。ただ、笑顔で応じたまま、結局何も保存しない人もいます。

私が住んでいる東京では、名刺交換はいまも小さな儀式です。両手で渡し、軽く頭を下げ、しまう前にきちんと目を通す。名刺に印刷されている内容は、データベースに移せます。でも、あの所作に当たるものはデジタルにはありません。そして多くの場面で、所作のほうがデータより重く受け取られます。

だから、カードは残しました。相手のスマートフォンの背面にカードを当てる。名刺を差し出すのとほぼ同じ位置です。それでプロフィールが開きます。出会いの人と人の部分はカードが、情報の部分はウェブページが受け持ちます。

カードに何も印刷していない理由

AnimaNext のカードは、表も裏もマットな黒です。印は中央の n だけで、光沢のある黒で型押ししてあり、光が斜めに当たったときにようやく見えます。名前も、QR コードも、URL もありません。

これは意図した判断です。カードに印刷したものは、いずれ古くなります。そもそも情報をオンラインに置いたのは、刷り直しをやめるためでした。印だけのカードなら、肩書きが変わっても作り直す必要はありません。なくしたとしても、拾った人にはほとんど何も伝わりません。開くのは、出会った人みんなにすでに見せている公開プロフィールだけだからです。

カードを忘れた日のための Wallet パス

Apple Wallet のパスもあります。要望があって用意したもので、カードを別の上着に入れたままの日に役立ちます。ただ、Wallet のパスはカードのように相手のスマートフォンに当てて渡すことができないので、パスには QR コードを表示しています。共有の中心はあくまでカードです。二つのうち、タッチで渡せるのはカードだけだからです。

AnimaNext の位置

地図の上に置くなら、AnimaNext は紙の名刺とデジタルだけのツールのあいだにいます。出会いが物理的だからカードは物理的で、情報が変わり続けるからプロフィールはデジタルです。市場の多くは、このどちらか一方を選びました。私たちが向き合っている人たちは両方を求めています。市場がどこへ向かうと言っているかより、その人たちが実際にどう人と会っているかに合わせて設計したいと考えています。

比較しているところなら、AnimaNext のブログに NFC 名刺と QR コード名刺の比較と、NameDrop とタッチ式のカードの比較があります。カードは animanext.com から注文できます。

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